【女の事件】豚小屋

第12話

職場の帳簿に大穴をあけて、栄南のナイトクラブのホステスの女に貢いでいたことが発覚した上に、ドーハンのトラブルを起こしたことで居場所をなくしたゆういちろうは、大須のナイトクラブのホステスの女に乗りかえて同棲生活をしていた。

ところ変わって、ホステスが暮らしているマンスリーアパートにて…

ゆういちろうは、外へ出ることが恐いので一日中部屋の中に閉じこもっていた。

時は、朝8時過ぎのことであった。

この時、ホステスの女が夜のおつとめを終えて部屋に帰宅した。

「ただいま…あんた…もう何日部屋からでてへんのかしら…」
「大丈夫じゃない…オレ…こわい…名古屋…いや、日本に居場所がない…外国へ逃げたい…」
「外国…あんたもしかして、栄南のホステスの女とドーハンのトラブルを起こしたけん、れいのナイトクラブのママから目ぇつけられているようねぇ…」
「どうすればいいのだよぅ~」
「そうねぇ…」

この時、ホステスの女は近くでペルシャジュウタンの販売をしているイラン人の主人の知り合いのだふ屋がいることをゆういちろうに教えた。

ゆういちろうは、ホステスの女の厚意に甘えて国外逃亡することを訣意(けつい)した。

ゆういちろうは、栄南のナイトクラブのホステスの女に大ケガを負わせたトラブルを放置して、国外逃亡する形になった。

そのことが原因で、よしえとあやみが恐ろしい事件に巻き込まれるのであった。

ところ変わって、飯田市北方にありますゆういちろうの姉夫婦が暮らしている家にて…

この日、よしえは義兄がつとめをやめて富士ノ宮市で暮らしている義兄の実家へ帰ると言う知らせをゆういちろうの姉から聞いたので、ものすごく不安定な表情になった。

ゆういちろうの姉は、よしえに義兄が勤めている職場をやめて富士ノ宮の実家へ帰る理由を悲しげな表情で説明した。

「よしえさん…よしえさんとしゅうさくにはもうしわけないのだけどぉ…8月いっぱいを持って家を売ることにしたの…」
「家を売る…家を売るってどういうことですか?」
「よしえさん…アタシとダンナは、富士ノ宮のダンナの実家へ帰ることになったのよ。」
「富士ノ宮へ帰るって…ダンナの仕事はどうなるのですか?」
「ダンナは、8月いっぱいで仕事をやめて富士ノ宮の別の事業所へ転職することになったわ。」
「向こうは、どういっているのかしら?」

よしえの問いに対して、ゆういちろうの姉はより深刻な表情で答えた。

「義兄が倒れたの…」
「倒れた…」
「くも膜下出血を起こして倒れて、心肺停止の状態よ…義兄は糖尿病など複数の持病を抱えていたのよ。」
「糖尿病。」
「ダンナの父親も、6ヶ月前に家で転倒して寝たきりになっているのよ。」
「そんな…」
「アタシは義父の介護を頼まれたのよ…だから、8月いっぱいで富士ノ宮へ移ることになったのよ…ごめんなさい…」
「そんな…それで、いつ不動産屋さんに行くのよ?」
「遅くても、8月25日前後…他にも8月中に完了させなきゃいけないことがたくさんあるから…なにかとあわただしくなるわ…よしえさんはどうするのよ?」

よしえは、ゆういちろうの姉にゆういちろうと離婚すると言うた。

ゆういちろうの姉は、残念そうな表情でこう言うた。

「仕方がないわよ…ゆういちろうは結婚に向いていない…ううん、結婚に向かない性格だから離婚するしかないわね…ごめんなさい…よしえさん。」
「もういいのです…アタシ、家を出たらしゅうさく連れて、大学時代の友人を頼って金沢へ行くことにします…再就職すると言うても、水商売しかない…」

よしえは、ゆういちろうの姉に今の気持ちを伝えた。

しかし、うまく伝えることができなかったのでくすんくすんと泣きじゃくっていた。

同じ頃であった。

豊田市小坂本町で暮らしているあやみと重朝夫婦にも悲しい報せ(しらせ)が入った。

この日、重朝が勤務している工場が1年後の8月31日を持って閉鎖すると言う知らせが入った。

重朝は、より重苦しい表情で帰宅した。

家の居間にて…

重朝は、あやみに工場閉鎖の報せを伝えたが、あやみの気持ちかひどく動転していたので落ち着いて話をすることができなかった。

「1年後に工場が閉鎖されると言うけど、あんたはどうするのよこの先…」
「どうするって…決めていない…」
「決めていない。」
「やめたあと、受け入れてくださる事業所があるかどうかが問題なのだよ。」
「今の工場の仕事を続けるの?」
「続けたい…けれど、工場は来年の9月からは枇杷島(びわじま)にある大工場に統合されるのだよ…」
「枇杷島…豊田から遠いわよ…近くに変えてくださいとお願いしてよ!!」
「近くは、三ヶ日(浜松市)の工場しかないのだよぉ~」
「あなた!!あなたは枇杷島と三ヶ日のどっちの工場へ行きたいのよ!?はっきりしてよ!!」
「だからまだ決めていないのだよぉ~」

重朝は、ものすごくイライラとした声であやみに当たり散らしたので、あやみはムッとした表情になっていた。

重朝は、あやみがムッとした表情で見ていたので、なげやりな声であやみに言うた。

「なんだよぅ…あやみはオレが言うことに不満があるのかよぅ…工場が閉鎖されても仕事を続けて行こうと思っていたけど、もう工場やめるわ…やってられるか…ケッ…」
「あなた!!どうしてなげやりになるのよ!!」
「もう話し合いしてもダメだ!!オレは、今の工場にいやいや就職したから、自分の仕事にほこりがもてない…」
「あなた!!どうしてそんななげやりな声で言うのよ!!」
「大きい声出すな!!」

重朝は、『ケッ…』と言うてから職場の待遇面の不満をへーぜんとした口調でぶち曲げていた。

「オレは…東京の大学へ行って卒業後は東京で働きたかった…それをオヤジが気に入らないと言うて内定をいただいた総合商社の仕事を取り消した…卒業後、オレはガマンして今の仕事に就いた!!オヤジのコネで今の職場に就職したのがいかんと言うことに気がついたからやめるのだ!!」
「それじゃあどうするのよ!?」
「ちょうどよかったわ…今工場は従業員さんを1200人減らすと言うていたし、オレは工場やめることにした…やってられるかバーカ!!…オラ!!酒!!酒!!酒!!」

あやみは、なげやりになってしまった重朝の顔を平手打ちで力を込めて6回叩いた後、真っ赤な目で重朝を見つめながらワナワナと震えていた。

「もういいわよ…もういいわよ!!あんたも重秀と同じように堕落したいのね!!もういいわよ!!こんなことになるのだったら、あんたと結婚なんかするのじゃなかったわよ!!サイアクだわ!!」

重朝に突き放す声で言うたあやみは、ワーッと泣きながら家を出て行った。

夜8時50分頃のことであった。

家を飛び出して、フラフラと歩いていたあやみは、豊田スタジアムの公園でゾンビの覆面をかぶった男5人に無理やり車に乗せられた後、行方不明になった。

それから4時間後のことであった。

よしえは、犯人グループのリーダーの男から『家の近くに豚小屋があるから、そこまで来い!!』と言う脅迫電話がかかってきたので、パジャマのまま家の近くにある無人の豚小屋へ行った。

よしえが敷地内に入った時であった。

この時、黒の目出し帽をかぶった男がよしえを豚小屋の中へ引っ張っていった。

豚小屋の中にて…

よしえは、小屋の中で黒の目出し帽をかぶった男10人と栄南のナイトクラブのママと会った。

よしえは、この時わけがわからなくなっていたので、怖くなった。

「あのぅ…」
「あんたがよしえさんね!!」

ナイトクラブのママが、よしえに凄んだ声で言うた。

よしえは、頭の中で大パニックを起こした。

「あのぅ…一体…」
「よしえさん!!今日はあんたにオトシマエをつけるためにここへ来たのよ!!」
「オトシマエ…」
「あんたのダンナがうちのかわいいホステスの顔をどついて大ケガを負わせたあげくにイランへ逃亡をはかったことを聞いたから、そうとう怒っているのよ!!」
「待ってください!!アタシ…なにがなんだか…」
「どんなにいいわけを言うてもアカンもんはアカン!!」

この後、恐ろしいゾンビの覆面をかぶった10人の男があやみをよしえの前につき出した。

「イヤ!!離して!!離して!!」
「あやみ!!あやみ!!」
「おねーちゃん!!おねーちゃん!!」
「あやみ!!イヤ!!イヤ!!」

この後、よしえとあやみは恐ろしいゾンビの覆面をかぶった男30人からボロボロに傷つくまで犯された。

それから180分後のことであった。

よしえが目をさました時、顔が真っ赤にはれていた上に、着ていたパジャマの上がズタズタに破れて、下は取られてナマ脚があらわになっていた。

下に着けていたブラジャーをちぎられて、ショーツを脱がされて、棄てられた。

身体は、どす黒く汚れた状態になっていた。

よしえは、フラフラとした足取りであやみを探していた。

よしえが犯された場所から900メートル先の床でズタズタに傷ついた姿であやみが倒れていたのを発見したよしえは、悲痛な叫び声をあげた。

衣服がズタズタに破れて、ブラジャーをちぎられて、ショーツを引きずり下ろされた姿で倒れているあやみに、よしえが声をかけたが、あやみは死んでいた。

「あやみ…あやみ…ねえあやみ…あやみ…あやみ…あやみ…」

ウソでしょ…

ねえ…

あやみ…

あやみ…

よしえは、震える声で何度も繰り返してあやみを呼んでいたが、あやみは目覚めなかった。

「あやみ…ねえあやみ…あやみ…あやみ!!あやみ!!ううううううううううう…ううううううううううう…あやみ!!」

ボロボロに傷ついて亡くなった妹にすがっているよしえは、強烈な声で泣き叫んでいた。

【おわり】
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