【女の事件】豚小屋
豚小屋・3

第1話

「イヤだ!!死にたくないイヤだ!!」

時は、2017年2月23日の深夜11時50分頃のことであった。

場所は、静岡市葵区の山奥の地区にある無人の豚小屋の中にて…

2016年に東京都内で芸能活動中に女性タレントさんがファンの男に刃物で刺されて大ケガを負った事件が発生した。

殺人未遂で起訴されて、裁判員裁判が結審したばかりの被告人の男が、公判中に過激な発言を繰り返して退廷させられた。

事件は、護送車で拘置所へ帰る途中で発生した。

男が乗っている護送車が襲撃事件に遭った。

護送車を襲撃をした犯人グループの男20人は、被告人の男を例の豚小屋に連れて行った。

被告人の男・淵埼(ふちざき)光秀(28歳)は、豚小屋の中で派手なシャツを着ているリーゼントの男たちにつき出された後、暴行を受けていた。

「やめろ~オレが何をしたと言うのだ!!」
「オドレ淵埼!!」
「よくもうちの事務所のレコ(女)を傷つけたな!!」
「他にも、組長の婚約者を犯して殺した分もあるから、かたきうちや!!」
「法が罰しないのであれば、オレたちで罰するしかない!!」

(ドカッ!!ドカッ!!ドカッ!!ドカッ!!)

リーゼントの男たちから集団暴行を喰らった淵埼は、小屋内の汚水曹に落とされた。

2月24日の早朝5時半頃のことであった。

キンリンの住民から消防に『豚小屋で、ラッカーのにおいがする…』と言う電話があった。

静岡市の中央消防署の科学消防車2台と救助工作車がけたたましいサイレンを鳴らして敷地内に入った。

事件現場の豚小屋のキンリンで暮らしている住民のみなさまは、ものすごく心配そうな表情で遠くから事件現場を見つめていた。

それから2時間後のことであった。

淵埼は、消防の救助隊員によって引き上げられた。

この時、全身に赤色のラッカーが吹き付けられていた上に、呼吸困難で危険な状況であった。

淵埼は、静岡市の消防本部のドクターヘリで北安東にある救急病院へ搬送された。

搬送中に心拍数などが大きく乱れるなど、生命に危険が及んでいた。

彼は、生死の境をさまよっていた。

そんな中であった。

信州下伊那郡喬木村から淵埼のことをいつも心配している保護観察士の直家(76歳)と長女のりつよ(47歳・パート主婦)が北安東の救助病院へやって来た。

直家とりつよの父娘は、集中治療室のベッドで苦しそうな状態で横たわっている淵埼を見たので、ものすごく不安定な表情になっていた。

「おとーさん…どうしよう…」
「なんてこった…」

淵埼は、数年前に東京でアイドルタレントさんにストーカーをした事件を起こしてケーサツから警告を受けた時に『アイドルの追っかけはしません。』『コンサート会場へ行きません。』と直家とりつよに繰りかえして言うた。

しかし、再びストーカーをしていたことを聞いたので、父娘は強烈なショックを受けた。

淵埼は私たちとの約束を反古(ほご)にした。

『アイドルの追っかけをしません。』『ライブ会場へ行きません。』と約束したのに、きれいに破るとはどういうことだ…

淵埼は甘ったれている…

もう一度、1から根性をたたき直さないといけないみたいだ…

直家とりつよは、淵埼にもう一度チャンスを与えてあげたい一心で、喬木村内でボクシングジムを経営している知人の男性にお願いした。

父娘は、知人の男性を通じて、男性の知人の知人のヤクザの顧問弁護士に被害を受けた女性タレントさんと所属事務所の代表の男性との示談交渉をお願いした。

淵埼は、治療のためにシャクホウされた。

しかし、退院後に行く場所がないので喬木村内で暮らしている直家とりつよの父娘の家でゲシュクすることになった。

淵埼は、事件から2ヶ月後に病院で目覚めた。

現地の病院で入院生活を経て、5月20日に退院した。

退院後、喬木村の直家の家に帰って来た。

5月23日の夜6時半頃のことであった。

ところ変わって、喬木村両平にある直家とりつよ父娘の家にて…

居間の食卓には、直家とりつよとりつよのむこの忠家(51歳・会社員)とりつよと忠家のふたりの娘・なおみ(20歳・大学生)とさおり(13歳・中2)と淵埼がいた。

淵埼は、直家とりつよから強烈な声で怒鳴られた。

「君は危うくところで命を落としてしまうところだった!!明日からは、危ないところで助かったと言うことに感謝をしながら生きて行きなさい!!」
「淵埼さん、人の言うことを聞きなさい!!『アイドルの追っかけをしません。』『ライブ会場へ行きません。』と約束したのに、どうしてヘーキで約束を破ったのかしら!!ケーサツから警告を受けたら素直にしたがえばよかったのに、どうして素直にしたがわなかったのかしら!!」
「淵埼!!」
「義父さま!!やめてください!!」
「あなたはだまりなさい!!」
「淵埼!!明日からは段ボール工場へ出勤してまじめに働きなさい!!この村にはコンサート会場もない、ライフハウスはない…職場と家庭だけしかない場所だから、テメーにはいいクスリだ!!」
「あなたはえらそうに言える身分じゃないのよ!!分かっているのだったら返事しなさい!!アタシの言うことが聞こえないのかしら!!」
「淵埼!!ごはん食べ終わったら大切な話をするから、反論せずに素直にだまって聞くのだ!!分かっているのだったら返事しろ!!」

直家は、より強烈な声で淵埼に怒鳴り付けた後『メシ!!』と言うて、怒った表情でごはんを待っていた。

反論することができない淵埼は、直家とりつよの言いなりになっていた。

淵埼は、翌日から村内にある段ボール工場に再就職をして、人生の再出発をしていた。

しかし、来て2日目に職場で暴れて従業員さん数人に大ケガを負わせて、職場の備品を壊したので、クビになった。

話を聞いた直家とりつよは、淵埼を居間に呼んで、正座させてどうして職場で暴れたのかと問い詰めた。

淵埼が淡泊眼(たんぱくがん・きつい目付き)でにらんでいた。

りつよは、強烈な力を込めて平手打ちで淵埼の顔を50回以上叩きまくった。

(バシッ!!バシッ!!バシッ!!バシッ!!…)

りつよに激しい力で顔を叩かれた淵埼は、赤い血液まじりの涙を流していた。

直家は、より恐ろしい表情で淵埼を怒った。

「淵埼!!キンシンしろ!!私がよしと言うまでは土蔵でキンシンしろ!!淵埼!!甘ったれるな!!」

直家は、淵埼をより強烈な力でボロボロに傷つくまで殴りつけた後、庭の土蔵に閉じ込めた。

土蔵に閉じ込められた淵埼は、助けてくれと言えないので、あきらめた。

それから2週間後のことであった。

直家とりつよは、淵埼のキンリンを解くタイミングをためらっていたので、ずるずると先延ばしにしていた。

そのことが原因で、直家とりつよ父娘は恐ろしい事件に巻き込まれて行くのであった。
< 22 / 53 >

この作品をシェア

pagetop