【女の事件】豚小屋

第5話

その日の夜のことであった。

常滑市内を逃げ回っていたしゅういちは、行方不明になった。

その間に、しゅういちが働いていた職場のみなさまがしゅういちのことを心配して家に電話をかけて来た。

『しゅういちさんはまだ帰っていないのですか?』『しゅういちさんに何があったのですか?』『しゅういちさんはいつ頃帰ってこられます?』『しゅういちさんの声が聞きたい…』…

電話の応対に当たっていたあいこは『ダンナが帰って来たらお電話をするようにお伝えいたします。』とあいまいな受け答えをした。

あの人は、どこへ行ったのかしら…

いつもだったら、晩ごはんまでには家に帰ってくるのに…

どうしよう…

どうしよう…

ところ変わって、家の居間にて…

あいことようすけと義母の3人がイライラしながらちづるとしゅういち帰りを待っていた時に、義父がものすごくつらい表情で帰宅した。

義母は、義父に『帰りが遅いわよ!!』と怒鳴り付けてからこう言うた。

「あなた!!しゅういちが職場放棄して行方不明になったと言うのに…どうして遅い時間に帰ってきたのよ!!」
「しゅういちのことなんかどーでもいい…しゅういちのことよりも、工場の経営の問題が深刻なのだよ…」
「あなた!!」
「しゅういちのクソバカが原因で、従業員さんがやめたのだよ!!」

義父は、ものすごく怒った声でしゅういちが従業員のBさんの婚約者の女性に手ぇつけたことが原因で工場をやめたと言うたあと、その場に座り込んで女々しい声で泣いた。

「今日は最もサイアクな1日だった…工場のために一生懸命になって働いてきた(Bさん)がやめてしまった…(Bさん)はうちの工場の主任なのだよ!!(Bさん)に任せていたお仕事が残っている…(Bさん)の後任がいないから困っているのだよぅ…しくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしく…しくしくしくしくしくしくしくしくしくしく…」
「あんたの泣き言なんか聞きたくもないわよ!!あんたが従業員さんたちをギャクタイしていたから去られたのでしょ!!あんたは最初から会社を経営する資格なんかなかったのよ!!あんたが工場を経営したいと言うから、うちの実家のオトンが開業資金の一部を出してくださった…その時にあんたはオトンとどんなヤクソクをしたのかを忘れているわね!!だから工場が傾いたのよ!!」
「ワシは…今日まで一生懸命になって工場をよくするためにがんばってきたのだよ…従業員さんたちのお給料を1円でも多く上げてあげたい…コーチン食べに行くだけでもいいから、福利厚生の特典を使いたかった…それをしゅういちの虫ケラが手前勝手なことをしたから実現できなかった!!虫ケラのせいで、ワシの人生はわやになった!!」
「あなた!!」
「しゅういちは家に入れるな!!工場で一生懸命になって働いてきた従業員さんをやめさすようなことをしたのだから、息子じゃない!!しゅういちは、きょうを持ってカンドーだ!!」
「カンドーって…あなたはしゅういちをカンドーしたら物事が解決すると思っているのかしら!!」
「やかましい!!だまれ!!だまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだーーーーーまーーーーーれ!!しゅういちはカンドーだと言ったらカンドーだ!!しゅういちが亡くなった時の生命保険の保険金1億8000万円は、全額常滑市の社会福祉協議会に寄付することにしたから、書面を書き換えた!!」
「あなた!!」

(ジリリリリリン!!ジリリリリン!!)

この時、電話機がけたたましいベルを鳴らしていたので、あいこが電話に出た。

受話器の向こう側から、豚の鳴き声と殴り付ける音が交錯して聞こえていた。

しゅういちは、家出したあと何者かに連れ去られたようだ。

しゅういちはふきこと一緒に岐阜市内の酒場街で密会をしていた。

その時に、露地裏で恐ろしい覆面をかぶった男20人に連れ去られた。

ふたりは、福井県大野市の山奥にある無人の豚小屋に連れて行かれた。

(ドカッ!!ドカッ!!ドカッ!!)

ところ変わって、福井県大野市の山奥の廃墟の集落にある無人の豚小屋にて…

しゅういちは、15人の男たちから集団で殴られていた。

ふきこは、4人の男たちにサバイバルナイフを突きつけられたので、身動きがとれない。

リーダーの男は、工場をやめたBさんであった。

リーダーの男は、スマホで受話器越しにいるあいこをキョウハクした。

「コラ!!オドレのシュウトを出せ!!オドレのシュウトを出せといよんのが聞こえんのか!?」

常滑の家にて…

あいこは、リーダーの男にこう言うた。

「もしもし…義父は今、身体がヒヘイしているので休んでいます。」
『コラ!!ゴタゴタゴタゴタ言わずに社長を出せ!!』
「もしもし…義父は電話に出ることができません!!」
『ほんなら社長のセガレを汚水曹に落として殺すぞ!!』
「やめてください!!」
『ほんなら社長出せ!!』
「ですから、義父は今休んでいます!!」
「貸しなさい!!」

義父は、あいこに『変わってくれ。』と言うて電話に出た。

「もしもし…もしもし…」
『社長か…』
「そうだ…一体どこから電話をかけているのだ!?」
『山奥…』
「山奥。」
『そうだ…コラクソッタレジジイ!!ワビを入れろ!!』
「ワビ?」
『コラ!!よくも工場の従業員たちをギャクタイしたな!!』
「どういうわけなんだ一体…」

ところ変わって、福井県大野市の山奥の廃墟の集落にある無人の豚小屋にて…

リーダーの男は、受話器越しにいる義父にオドシをかけた。

「オレは今日をもってふきこと婚約をカイショウした!!キサマの虫ケラがふきこに手ぇつけたから、虫ケラを汚水曹へ沈めて殺すぞ!!」
『やめてくれ…しゅういちを殺すな!!』

その時であった。

「イヤ!!イヤ!!イヤ!!」

ふきこを押さえつけていた男4人は、ふきこを倒して、クリーム色のスカートの中からショーツを脱がした。

「イヤ!!やめて!!やめて!!」
「おお…黒の花のシシュウのパンティ…」
「イヤ!!イヤ!!やめて!!」

続いて、白のブラウスが思い切り破れた。

(ビリビリビリビリビリ!!)

「イヤァァァァァァァァァァァ!!イヤァァァァァァァァァァァ!!」
「おお…黒の花のシシュウのブラジャーだ。」
「おお…Mカップ…」
「ちぎりたいよ。」
「おお…」

(ブチッ)

続いて、ブラジャーの金具が壊れる音がした。

「イヤァァァァァァァァァァァ!!イヤァァァァァァァァァァァ!!」
「おお…Mカップのバストだぁ…」
「たまんねー」

常滑の家にて…

『イヤァァァァァァァァァァァ!!イヤァァァァァァァァァァァ!!イヤァァァァァァァァァァァ!!イヤァァァァァァァァァァァ!!』

受話器の向こう側から、ふきこが強烈な叫び声としゅういちの泣き叫ぶ声が聞こえていた。

「やめてくれ!!」

(ガチャ…ツー、ツー、ツー、ツー、ツー、ツー、ツー、ツー、ツー、ツー、ツー、ツー、ツー、ツー、ツー…)

電話は、そこで切れた。

義父は、その場に座り込んで頭を抱えた。

サイアクだ…

サイアクの日だ…

その場に座り込んだしゅういちの父親は、しくしくと泣いていた。

あいことしゅういちの母親も、しくしくと泣いた。
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