【女の事件】豚小屋

第16話

11月２日の早朝５時過ぎのことであった。

場所は、あきる野市戸倉の山奥にある無人の豚小屋にて…

豚小屋の敷地内に警視庁のパトカー20台がけたたましいサイレンを鳴らしながら敷地内に次々と停車した。

パトカーから次々と警察官たちが降りた後、現場検証が始まった。

現場検証開始から40分後のことであった。

敷地内にある汚水槽の中から、ズタズタに傷ついて破損している男の遺体が引き上げられた。

引き上げられた男の遺体は、南川であった。

南川は、11月１日の深夜11時過ぎに八王子市三崎町の酒場街でやくざの男７人のグループと乱闘騒ぎを起こして、大ケガを負わせて逃げていた。

彼は、逃げる途中で豚小屋に連れて行かれて集団リンチを喰らった後、汚水槽に突き落とされた。

逃げた男のグループの身元を特定するために必要な物証がとぼしいので、捜査は難航するようだ。

同じ日の夕方６時過ぎのことであった。

ところ変わって、小作台にある家にて…

家に帰って来た鎮房(しげふさ)は、ちづるに市役所をやめることにしたと言うた後、塩尻の実家へ帰ることを伝えた。

「ちづる…オレ…市役所をやめて塩尻の実家へ帰ることに決めたよ…」
「実家へ帰るって…」
「ああ…本当だよ…オヤジが経営している工場を継ぐことを決めたよ。」
「そう…」
「オレ…これからは家族のために生きて行くことを決めた…今までつらい想いをさせてごめんね。」

鎮房は、もうしわけない表情でちづるにあやまった。

ちづると鎮房は、週明けから出発する準備を始めた。

１ヶ月かけて、鎮房の仕事の引き継ぎなどをした。

2017年12月20日にすべてを完了させた後、ふたりは東京を出発して塩尻へ向かった。

その頃、あいこはハローワークの契約職員のお仕事を年内でやめた後、ようすけを連れて小淵沢の実家へ帰っていた。

あいこは、両親の知人の紹介で塩尻市で働くことになったので、12月22日に塩尻市大門桔梗町(だいもんききょうまち)にあるマンスリーアパートへ移り住んでもう一度やり直すことにした。

嶋口さんは、アパートの一室で充満したガスを大量に吸って自殺した。

遺体のそばには、遺書があった。

南川と嶋口さんが亡くなってから２ヶ月の間、何ごともなく平穏であった。

しかし、恐ろしい悲劇はまだ終わっていなかった。