~fault~私だけが・・・
~匠side~


車の音にカーテンをよけた。
そこから見えたのは車から降りてくる渉。
運転席には、見た事のない男が居てなんだか見てはイケナイものを見た気がした。

男と楽しそうに話す、あんな顔の渉を初めて見た。
運転席から顔を出すそいつは渉の頬に手を伸ばし優しく微笑んでいて
その時の渉の顔は見えなかったけど渉の手がそいつの手に重なっているのが見えた。

手を振りいつまでも車が走り去った方を見ていて少しすると笑顔の渉が家の中に消えて
ほどなく灯る部屋の明かりに慌てて自分の部屋の電気を消した。


オレは次の日、最近コソコソと学校へ行く渉の時間を見計らって外へ出て
わざとらしく「おう渉!」って声を掛けると一応オレの顔だけは見た渉。
3ヶ月ぶりの対面か・・・

「ぉはよっ」って言うと今度は迷惑そうに「おはよう」と威嚇するみたいに言った。

何も言わずに横並びに歩いていると
「どうしたの?」って顔を上げるから「なにが?」って渉を見ずに言う。

「寝ぼすけが早いじゃん」
「宿題忘れてた」
「今日、指される日なのに。のんきだね。」

オレと渉と央は同じクラスで

「ノート貸せよ」
「は?央に見せてもらいなよ」
「科学得意じゃん」
「・・・・・・」

無言で渡されたノート


電車に乗るととソワソワしだした渉。
その原因はすぐにわかって

「おはよっ。渉」
掛けられたその声に一瞬ビクッとして、声の方を見た渉に釣られてオレも見た。

昨日の奴だ・・・

「おはよ~。今日は遅い電車って言ってなかった?」
「アハ(笑)でもさっ」
そう言うとそいつは、渉の耳元に顔を近づけ渉を引き寄せ手を包み込んで笑ってる。

何 言ってんだよ。すげー気になる・・・
妙なキブンだ。


渉は、はずかしそうにそいつを見ていてオレは、そんな渉に一瞬ドキっとした。



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