~fault~私だけが・・・
~優斗side~


チャイムが鳴りドアを開けると渉が笑っていてオレも笑顔になる。
おじゃましますって玄関にはいるなり「わぁ~~イイ匂い」ってうれしそうな顔。
料理が趣味のオレはこの日、渉の大好物のシチューを作って待っていた。
渉の笑顔を見た時には正直ホッとした。来ないかもって言うのも想定内ではあったから・・・

「何か手伝うよ」って言ってくれた渉の肩に手を置き椅子に座らせ
「渉はここに座ってて?」ってキスをしたらはずかしそうにした渉を思わず抱きしめた。
愛しい気持ちがすぐに行動に出てしまう今の自分に戸惑いながらも微笑んでくれる渉に安心してキッチンに向かった。

「すご~~い」とか「ホントおいしいよ優斗!」とか「何でもできちゃうんだね~」なんて喜んでくれる。

初めて家に連れてきた女性。
なんの迷いもなく、こんなに可愛い子を早く家族に会わせたくて困った顔をした渉を少し強引に家に招待してしまった。
でも渉は『ありがとう』って。

自分の置かれた環境から自分の事を否定しがちの渉だったけど
オレの家族と接することで自身の存在の大切さを渉には感じてほしかった。
なによりオレが渉のそう言う存在になりたかったしオレにとっても渉が大切な女性なんだよって知っていてほしかったから、ありがとうって言ってくれたときには本当にうれしくて安心した。

とは言え渉の心を軽くするにはまだまだで、どうしても否定的な言葉が自然と出てきてしまうからオレはどんなときでも渉に「キミは愛されていて必要な人なんだよ」って伝え、感じさせてあげたいって強く心に誓う。
だけどそんな気負いは必要ないほどオレの渉への想いは自然に行動言動に出て
時に渉を困らせているのかもしれないな・・・(笑)


「も~~ほんとにおいしかった。ごちそうさまでした」
「あ、うん。美味しかったなら良かった。」
「キッチン借りてもいいかな?」
「いいけど、どうしたの?」
「洗い物は私にさせて?食べるだけじゃね(笑)」

ほらね。キッチン借りてもなんてさ(笑)ガサツな子が言うわけないんだよ?

「そ?じゃぁお願いします」
「うん!」

オレからエプロンを奪い取ると(笑)キッチンに移動した。

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