~fault~私だけが・・・
静かにドアを閉めると匠は『シャワー行くわ』ってバスルームへ消えた。
匠も私もBARを出た時にはかなり酔っていた。
ふわふわ気持ちよく足もおぼつかずで部屋に入った時にも正直酔いは冷めてはいなかったし頭も回ってない状態だった。
でも何もかもが分からない状態ではなくて、だからこそなんだけど・・・
帰ろうと思ったら帰られたはず。一緒にでも一人でも帰ることはできた。
お互いに・・・

『オマエはどうする?』
『あ、もちろん入るよ』
『ふ~ん』

静かに戻るとライトはダウンされていてベッドの中で目を閉じている匠を確認してベッドの端の端、
静かにベッドの中に入り息を殺す様に大きく一呼吸して目を閉じると
ガサって動いた匠の手が探ることもなく一瞬で私の左手に触れた。
ビックリして引っ込めようとするとギュって握られ息をのむ。

何度か私の手を確認するかのように親指で撫でた匠がグっと縮めた距離。
引き寄せるから自然と匠の腕の中、お互いが大きく呼吸だけを繰り返す。
重なった手が離されて身体全体を包み込まれ、オデコに落ちた優しいキスにギュって目を閉じる。

クス笑った声に顔を上げると匠の顔が見えた。
『着いてきたのオマエだからな』
『うん』

匠の優しい笑顔。
昔から口は悪いのに笑顔は誰よりも優しくて私の癒しの笑顔。
頬を包み込まれ触れるくちびるは少し震えていて胸が苦しかった。
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