～fault～私だけが・・・

～匠side～


至って冷静なフリをして話をした。
だけど落ち着くとだんだんと腹が立ってわからなくなってくる。
あいつは、なんなんだ！！なんであんなにフツーなんだよ！
あいつの中ではなんでもない事だって言うのか？

渉が分からなかった。
ニコっと笑った渉が・・・

昨日の今日で、なんであんな顔してデートなんて出来ンだよ！！
オレはからかわれているだけなのか？

「チキショー！！」
オレは腹が立ってしょうがなかった。

自分の気持ち。渉の態度。すべてに！！

ただオレは忘れることなんかできないし、なかったことにもできない。
フラフラだった渉と一緒に見上げたそこに入るまでの間に色々考えた。
酔いはとっくに覚めてたオレは渉の態度や言葉の合間に感じられる思いに賭けてみたくて
だから渉の手を放して1人で中に入った。
オレの感じる渉の思いなんて、もしかしたら独りよがりの自分勝手な解釈なのかもしれないしズルいのかもしれないけど渉の意思に任せた。

でも渉の過去を知るオレは渉が無理なら絶対に先には進まないって決めて
抱きしめた渉の腕がちゃんとオレに触れたのを感じてからもう一度抱きしめた。
ゆっくりキスをして確認するように触れていったつもり。
今までに聞いたことがない渉の甘い声に1人高ぶって我を忘れそうになるのを必死で押さえて
静かにうなずいた渉の声を聞きながらひとつになった。

『ﾀｸﾐ…』ってオレを呼ぶ渉が愛おしくてたまらなくて、オレのものって錯覚しそうになるくらい腕の中に渉がいることが幸せで離れたくないって思ったのに・・・
渉は違ったんだよな。や、そうじゃないか、、違うも何も渉には笠間さんがいる。

違うのはオレの方か・・・(笑)