芸能人の幼なじみと、内緒のキスしちゃいました。



「……なんて。ほんとはどんなかわいーでもうれしいくせに」


「う……っ、バカっ」



ほらほら、わかっててこういうこと言うんだから。


震える指先にグッと力を入れて、目の前の掛け違えたボタンをぜんぶ直して。


あとは首からぶら下がってるネクタイを結ぶだけなのに、いつもすごく苦労する。



「ちょっとかがんでくれないと結べない」


「……ん、これでいい?」


「きゃ……っ、やだ近すぎ……っ」



これもわざと。


悝世は背が高いけど、わたしが低いせいでネクタイをうまく結べない。


だから少しかがんでくれればいいのに、イジワルな悝世はわたしがかがんでって言うまで何もしてくれない。



おまけにこうやって頼んでみたらものすごく顔を近づけてきて、キスできちゃいそうな距離まで顔を寄せてくるから。



「依茉が近づいてって言ったくせに」


「近づいてなんて言ってないもん」

< 11 / 359 >

この作品をシェア

pagetop