芸能人の幼なじみと、内緒のキスしちゃいました。



「別に、すきじゃない、……きらい」


画面に映る女優さんは何も悪くない。
嫌いでもないし、正直可愛いなぁって憧れてる部分もあったけど。


あてつけみたいに、きらいが出てきてしまった。



「……もう、今日疲れたから、寝る……ね」


ほんとは全然眠くないよ。

むしろ、悝世と一緒にいたいし触れたいのに。


うまく言葉として出てこないの。



「ん、わかった。おやすみ」


ほら、冷たい。

前なら一緒にベッドに入ってくれるのに。



寝室の扉をバタンッと閉めて1人になったらすごく悲しくなった。


力なくベッドに倒れ込んで、ギュッと目をつぶる。



「悝世のバカ……」


空気に呑み込まれそうなくらいの、小さな声。



結局、悝世がベッドに入ってきたのは、ずっと遅い時間。


全然眠れなくて寝たふりをしてたけど。


その日も、悝世が触れてくることはなかった。

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