俺様騎士団長は男装女子が欲しくてたまらない〜この溺愛おかしくないですか?~
恥ずかしそうなエドガーを見るのは新鮮で、フランシスはからかってみたくなる。

「いつかは? 今、恋人を作ればいいじゃないか。エドガーなら、よりどりみどりだ。特別な相手ができれば、他の女の子たちは諦めて周囲が静かになるかもしれないよ」

エドガーはその提案をからかいとは受け取らず、窓ふきの手を休めて「そうなのか?」と悩みだした。

けれどもすぐに掃除を再開させ、「それはできない」とボソボソと言う。

「なぜだい?」

「好きだと思える相手がいない。そういう女が現れたら、恋人にしたくなると思うけど、今はまだいい」

窓ガラスに微かに映る、しかめられたその顔は、怒っているのではなく、耐えがたい恥ずかしさと闘っているようだ。

女性に対して真面目で誠実というより、奥手な感じがして、フランシスは実の弟以上にエドガーを可愛く思っていた――。

過去を話し終えた医師長は、「どう思う?」とアリスに問いかけた。

恋愛事に恥じらう騎士団長を想像し、そんな少年時代もあったのかと微笑ましく思うアリスであったが、医師長のどこか面白がっているような顔を見る限り、そのような感想は求められていない気がした。

< 100 / 228 >

この作品をシェア

pagetop