俺様騎士団長は男装女子が欲しくてたまらない〜この溺愛おかしくないですか?~
秘密を知られても
初任務から五日が経った朝、誰かが部屋のカーテンと窓を開けた。
小鳥のさえずりが聞こえ、早朝の涼しい風を肌に感じても、アリスは半分夢の中にいて寝返りを打つ。
「んー、クリームたっぷりのケーキなんて初めてだっぺ。家族にも食べさせたい。残ったの、もらって帰ってもいい?」
寝言を言ってフフッと笑えば、枕の横が軋んだ。
「おい、朝だぞ。起きろ」
その声でハッと目を開けると、拳三つ分の距離に端正な顔があり、「ひゃっ!」と驚きの声を上げてしまう。
アリスを起こしたのは、ロイ騎士団長。
すでに騎士服に着替えて腰に剣を携え、身嗜みを完璧に整えた騎士団長が、アリスの顔の横に片手をついていた。
「なにを驚いている。早く着替えろ」
騎士団長は淡白にそう言うと、アリスから離れて、隣の部屋へ戻っていった。
寝起きで頭がハッキリとしていないため、なぜ騎士団長がいるのかと驚いてしまったが、すぐに思い出す。
(そうだった。私のベッド、騎士団長の部屋に持ってこられたんだ……)
それは五日前のこと。
日が落ちるまで医務室で過ごしたアリスは、医師長の許しを得て、そこを出ようとした。
すると騎士団長が、アリスの様子を見にやってきたのだ。
焦ったアリスは、笛を吹かずにコズメルと対峙してしまったことを詫び、深々と頭を下げた。
けれどもそれに対して叱責はなく、『顔を見せろ』と顎先をつままれて上を向かされた。
戸惑うアリスの顔中に視線を注いだ騎士団長は、『なるほどな……』となにか納得し、真顔で命じた。