俺様騎士団長は男装女子が欲しくてたまらない〜この溺愛おかしくないですか?~
愛され、幸せになる使命
短い秋は駆け足で過ぎゆき、コルドニア王国に冬の気配が漂っている。
アリスが王都に来てから、半年ほどが経つ。
見回りや警備、要人の護衛などの任務を問題なくこなせるようになったアリスは、先週からやっと見習いの文字が取れ、従騎士と名乗ることができるようになった。
アリスをここまで導いてくれたのは、騎士団長だ。
毎夜の個人指導のおかげで、人並みに読み書きや計算ができるようにもなった。
そして沐浴後の髪もまだ乾ききっていない二十三時頃、アリスは今夜も勉強をみてもらっている。
その指導は、かなり刺激的だ。
「ロイ騎士団長、あの……」
騎士団長の部屋の暖炉には薪が燃え、暖かい。
アリスは執務机を借りて、教本を開いている。
読み書きの練習として与えられたこの本は、『騎士の心得、百カ条』。
騎士に必要な知識も得られる本がいいだろうと、騎士団長が選んでくれたのだ。
「どうした。どこが読めない?」
ごく普通の口調で問うその声は、アリスの後ろ髪にかかった。
騎士団長は執務机に向かって椅子に腰かけており、その膝の上にアリスが座らされているのだ。
読めないのではなく、密着する体に意識を持っていかれて、勉強に集中できないことに困っていた。