俺様騎士団長は男装女子が欲しくてたまらない〜この溺愛おかしくないですか?~
恋の誘惑に流されかけた心がもとに戻れば、この特訓から逃れたいという気持ちが勝り、医師長に助けを求めた。

騎士団長は舌打ちし、アリスを膝から下ろす。

「フラン、話を聞こう」

そう言って、長椅子に移動した。

暖炉の前にある長椅子に、アリスも呼ばれた。

アリスと騎士団長が隣り合って座り、医師長はテーブルを挟んだ向かい側だ。

特訓の余韻と、それを見られた恥ずかしさにアリスはまだ熱の引かない顔をしているが、ふたりは真面目な話を始める。

「薬草売りの旅商人から、心配になる話を聞いたんだ」

医師長が丸眼鏡の奥の瞳を深刻そうに細め、腕組みした騎士団長が真顔で聞いている。

それは隣国、バルムンド帝国の話であった。

バルムンド帝国とコルドニア王国は、ライル川という大河を挟んで国境を接している。

前皇帝が急死し、その弟が帝位に就いてから、我が国と緊張状態にあるのは、アリスも知っている。

王都に来て職探しをしていた時に、雑貨屋の店主に教えられたのだ。

< 161 / 228 >

この作品をシェア

pagetop