俺様騎士団長は男装女子が欲しくてたまらない〜この溺愛おかしくないですか?~
騎士団長は意地悪です
入団から一週間ほどが経つ。
夕暮れの空は層をなして美しいが、そんなものに見惚れている余裕はない。
アリスは百人ほどの騎士たちとともに訓練場にいて、上官のしごきに耐えているところであった。
新入団の従騎士も含めた騎士たちは、剣を交えたり、騎馬戦を勇壮に繰り広げたりしているが、アリスはひとりだけ訓練場の隅で、腕立て伏せをさせられていた。
「おい見習い、ズルをするな。膝をついたら意味がないだろ」
アリスの太腿を蹴ったのはグレンという名の正騎士で、今日のアリスの指導役である。
グレンは硬そうな毛質の短い髪をして、頬骨の張った四角い顔をしている。
歳は二十五。つり上がった目は細く、好青年とは言い難い顔つきだ。
従騎士を指導するのは、正騎士の仕事である。
二百人ほどいる騎士団総員のうち、正騎士の資格を持つ者は、四分の一ほどであろうか。
正騎士の命令は絶対で、従騎士はなにを指示されても従うのみ。