俺様騎士団長は男装女子が欲しくてたまらない〜この溺愛おかしくないですか?~
ここから馬で五日ほどもかかる遠い地にある王都は、何倍、いや比較にならないほど発展しているらしい。

その華やかさと活気は、田舎者には想像できないほどだというので、アリスは憧れた。

(いつか王都に行ってみたい。でも女だからという理由で、村から出してもらえない。つまらないわ……)

心の中で不満を呟いたら、みすぼらしい平屋の我が家にたどり着いた。

漆喰の外壁はひび割れの補修跡が目立ち、汚れて灰色に見える。

「ただいま」とアリスが木戸を開けると、そこは土間だ。

かまどと年季の入った木目の調理台があり、薪やバケツ、鍬や鋤などの大事な農機具が所狭しと置いてある。

油がもったいないのでまだランプに火は灯されておらず、家中が薄暗い。

調理台の前には木綿の頭巾を被った小柄な母親がいて、じゃがいもの皮をむいていた。

その隣に立ったアリスが、いつものように夕食の支度を手伝おうとしたら、「そんなことより」と母親に眉を寄せられた。

「どうしたの?」

じゃがいも片手にアリスが目を瞬かせれば、母親が奥に向けて顎をしゃくる。

< 3 / 228 >

この作品をシェア

pagetop