俺様騎士団長は男装女子が欲しくてたまらない〜この溺愛おかしくないですか?~
けれどもエドガーは、伯爵に対し、はっきりと反対した。

仔馬は伯爵の所有物で、もちろん決定権は伯爵にある。

加えて雇い主であり、絶対的権力を有する領主でもある。

逆らえばお咎めを食らうかもしれないというのに、エドガーは臆することなく頼み込んだ。

「この仔馬をください。餌代は僕の給金から支払います。世話をして訓練し、立派にしてから旦那様にお返しします」

ハミルトン伯爵は独裁的な性格ではなく、領民の意見も聞いてくれる温厚さがある。

この仔馬は育てても使い物にならないだろうと思っても、十歳のエドガーの必死の頼みを聞いてくれた。

それからのエドガーは、仕事以外の全ての時間を仔馬の世話に当て、懸命に育てた。

そうして三年ほどが経ち、成長した雄馬は他の馬より毛艶がよく、筋肉もしなやかで、名馬と言われるまでになった。

今では伯爵の愛馬として、狩場や遠乗りで活躍しているという――。

話し終えた医師長は、太い木の幹に背を預けたまま、澄んだ青い瞳をアリスに向けた。

黙っているということは、感想を求めているのだろう。

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