俺様騎士団長は男装女子が欲しくてたまらない〜この溺愛おかしくないですか?~
入団試験で不合格を言い渡された者たちはアリスがズルをしたように感じるだろうし、厳しい基準をクリアして入団した者たちからしても、面白くないだろう。

その不満が敵意となってアリスに向けられないための、雑用であるという。

ちなみに過去にも仮入団の見習いがふたりいたそうだが、早く一人前にしてやろうという思い遣りからの騎士団長のしごきに耐え切れず、数日で辞めてしまったという。

先ほど医師長が、『好きな相手にまたふられてる』と言ったのは、そのような意味らしい。

「そうだったんですか……」

アリスは目からうろこが落ちる思いでいる。

まさか皿洗いまでが自分のためであったとは少しも思わず、感謝と誤解していたことに対する申し訳なさが込み上げた。

それを医師長に伝えて謝れば、青い瞳が弧を描く。

「君は素直だね。感謝と謝罪は直接エドガーに言ってやって。喜ぶから」

「えっ、喜ぶんですか……?」

自分にお礼を言われて笑みを浮かべる騎士団長を想像できない。

戸惑うアリスをクスリと笑った医師長は、「表情には出さない奴だけどね」と付け足した。

(今、“奴”って言った。ふたりの関係って……?)

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