俺様騎士団長は男装女子が欲しくてたまらない〜この溺愛おかしくないですか?~
それは洗濯石鹸の香りがする清潔なもので、メイドが翌日の分を各部屋に用意してくれる。

窓のカーテンに隠れるようにして寝間着を脱ぎ、アリスが着替え始めれば、年上の従騎士が笑う。

「またそれか。着替えのたびに隠れられると、覗いてやりたくなるな」

「駄目! 絶対に見ないでね」

「男のくせになにが恥ずかしいんだよ。変な奴だな」

なんと言われようとも、人前で着替えをしたくない。

下着も男ものを身に着けているけれど、薄着になれば女だとバレる可能性がある。

男兄弟の中で育ったので、同部屋の住人が男だらけであってもさほど気にしないが、こういう点では不便を感じる。

「アリュースは多感な年頃なんだよ。からかわないでやって」

年上の従騎士を諫めてくれたパトリックに感謝しつつも、アリスはカーテンの裏で忙しく着替えをする。

騎士服を着終えると、「行ってきます」と部屋を飛びだし、騎士団長の部屋を目指した。

アリスの部屋は一階で、長い廊下の真ん中辺りにある階段を使い、騎士団長の部屋がある二階へ上る。

壁の燭台にポツポツと火が灯る廊下に、人の姿はない。

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