俺様騎士団長は男装女子が欲しくてたまらない〜この溺愛おかしくないですか?~
カーテンと長椅子は藍色で、暖炉上の壁には、クロスさせたレイピアが飾られていた。

貴族ほどの豪華さはないのであろうが、アリスにとっては十二分に高級なしつらえである。

(こんなに家具が置いてある部屋を初めて見た。ロイ騎士団長はお金持ちなんだ。すごい……)

まずはそのことに気を取られてしまったが、執務机の方から鋭い視線を感じて、すぐに緊張感を取り戻す。

騎士団長は執務机に向かって腰掛けており、書類のようなものを書いていたようだ。

腰に剣は差していないが、まだ騎士服姿である。

羽根ペンを置くと、「ここまで来い」とアリスを呼び寄せた。

「はい……」

勝手に午後の訓練を切り上げたと、叱責されるのだろう。

アリスはそう予想しており、伝え忘れたに違いない医師長を恨めしく思う。

執務机の真横まで行き、姿勢を正すと、叱られる前に先手を打って頭を下げた。

「すみませんでした。でも決してさぼろうとしたわけではありません。医師長が訓練場にいらして――」

事情を説明している途中で、「それはフランに聞いている」と遮られた。

“フラン”とは、フランシスという医師長の名前の愛称なのだろう。

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