俺様騎士団長は男装女子が欲しくてたまらない〜この溺愛おかしくないですか?~
(フウフウ言っているのはデイブを乗せている馬の方だったわ。付き合わされる使用人たちも気の毒。でも一番、可哀想なのは私よ)

畑の細道にデイブの姿を見つけると、アリスは鎌を置いて逃げ出す。

見つからずにうまく逃げられる時もあれば、追いかけられる時もある。

デイブはひとりで馬にも乗れない男であるため、綱を引いてお供していた使用人の男が追いかけてくるのだ。

それを振り切ろうと無駄に走り回っているため、最近では足が速くなり、持久力もついたように思う。

デイブの名を聞いただけでうんざりするアリスを、父親はすまなそうに見ている。

けれども言わねばならないと決意したように両手を握りしめ、口を開いた。

「デイブさんがお前を嫁に欲しいと言っている。贅沢暮らしができると思えば、我慢できるべな?」

「ぜ、絶対に嫌だっぺー!」

アリスは椅子を倒して立ち上がった。

焦りから回らない口で断ってくれるよう懇願したが、父親は面目なさそうに頭を掻いてから首を横に振った。

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