俺様騎士団長は男装女子が欲しくてたまらない〜この溺愛おかしくないですか?~
異性を意識しないようにしようとしても、乙女心と恥じらいが鼓動を弾ませた。

そんなアリスの気持ちに少しも気づかない様子の騎士団長は、アリスの柔らかな腹部を撫でながら真顔で続きを話す。

「動機がなんであれ、入団したからには王家に忠誠を誓え。我らの職務は王家と、王都に住まう臣民を守ることにある。この紋章を見ろ」

黒い騎士服の胸元には、騎士団の紋章が刺繍されている。

それは盾の形をしており、縦にふたつに区切られて、左には王家の紋章にもある双頭の鷲が、右にはぶどうと小麦の穂が描かれている。

ぶどうと小麦は国の名産で、民を意味する図柄でもある。

王家と臣民を守るという騎士団の役割が、そのまま紋章となっているそうだ。

ふたりきりの室内に、静かに響く真剣みを帯びた声。

大事な話をされていると感じたアリスは、羞恥を心の奥に押しやり、騎士団長の言葉に集中する。

「紋章が剣ではなく盾なのは、騎士団の使命が攻撃ではなく守ることにあるからだ。俺は命を賭して使命を果たす。それが生きる目的だ。お前もそうでなくてはならない」

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