俺様騎士団長は男装女子が欲しくてたまらない〜この溺愛おかしくないですか?~
「ああ、さっき、怪我をした者を医務室に行かせたからな。あぶれたのは、そのせいだ。お前は抜けていい。休憩してろ」

邪魔そうに言われて、アリスは傷つきつつ、その場を離れた。

(パトリックみたいに期待されている人が優先なのは仕方ない。寝不足でしんどいし、ちょっとだけ休憩させてもらおう……)

訓練場を出たアリスは、建物の横にある水くみ場へ。

手漕ぎポンプで水を出してバケツに溜め、汗だくの顔を洗う。

喉も潤してホッと息をつき、顔を上げると、八十メートルほど離れた奥に馬車が見えた。

緑豊かで広大な前庭の中央を、正門に向けて石畳の道がまっすぐに延びている。

そこを王家の紋章をつけた立派な馬車が一台、ゆっくりと進んでいた。

アリスはまだお目にかかったこともない王族の誰かが、外出するところであるようだ。

馬車の前後には、騎士を乗せた馬が二頭ずつ歩いている。

その先頭の毛艶のよい黒馬に跨がっているのは、ロイ騎士団長であった。

(護衛の任務なんだ。素敵……)

凛々しく麗しい横顔と、騎士服を誰より華麗に着こなす逞しい肉体。

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