俺様騎士団長は男装女子が欲しくてたまらない〜この溺愛おかしくないですか?~
加えて、怪しき者は何人たりとも主君に近づけさせはしないという頼もしさが、勇壮な騎馬姿に表れている気がした。

胸の高鳴りを感じながら一行を見送ったアリスは、自分も早く任務にあたりたいと思っていた。

パトリックはとっくに初任務を終えている。

毎日ではないが、王都の見回りや警備、城内での見張りの仕事に従事している。

自分とパトリックの実力差を思えば当然ではあるが、まだ訓練しかさせてもらえないことを悔しく思っていた。

(私だって、活躍したい……)

アリスは奥歯を噛み、水にぬれた手を握りしめる。

木陰に座って休憩しようと思っていたけれど、爪先を訓練場に向けて駆け出した。

誰も剣の相手をしてくれないのなら、素振りをしようと考えていた。


夜も更け、時刻は二十二時を回った。

夜間警備の者以外の騎士たちは、思い思いに自室で過ごし、そろそろ眠りに就こうとしている者もいることだろう。

けれどもアリスはまだ休めない。

全騎士が湯を浴びた後の沐浴場の掃除も、見習いであるアリスに言いつけられた仕事なのだ。

沐浴場は宿舎の一階の奥にあり、五十人がいっぺんに入れるほどに広い。

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