俺様騎士団長は男装女子が欲しくてたまらない〜この溺愛おかしくないですか?~
ひとりでの掃除は大変だが、これに関してアリスは不満に思わず、むしろありがたいと思っていた。

なぜかと言うと、ひとりで沐浴場を使えるので、女だと見破られる心配をせずに体を洗うことができるからだ。

沐浴場は素焼きのタイル敷きで、湯槽がぐるりと壁に沿って造られている。

湯槽とは、石を積んで隙間を漆喰で塞いだものを枠とし、洗身洗髪に使う湯を溜めておくもののことである。

その湯を大きな木の柄杓ですくい、体にかけるのだ。

貫頭衣と下着だけを身に着けたアリスは、オイルランプが三か所に吊るされている沐浴場を手早く掃除する。

柄のついた獣毛ブラシで床をこすり、五十個ある木箱のような椅子を磨く。

湯槽の中は、翌日、新しい湯を溜める前にメイドが掃除をしてくれるので、やらなくていいと言われている。

急いで掃除を終えてから、湯槽の前に椅子を置いて腰かけ、体を洗う。

その際も服は脱がない。

二十二時半になろうかというこの時間、全騎士が沐浴を終えたと思われるが、万が一に備えて裸になることを避けている。

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