シンフォニー ~樹

「恭子ちゃん、本当に偉いのよ。色々 私の真似をしてくれるの。掃除とか、お茶の入れ方とか。」



恭子が家に帰った日は、家族みんなが 寂しくなってしまう。


「ご両親が きちんとしているからね。恭子だけじゃなく、ケンケンも良い子だよ。」

樹が言うと、

「ほら、そう言われるんだから。樹もちゃんとしてよね。」

恭子がいない寂しさで、樹に 八つ当たりをする母を お祖母様は笑う。
 

「大丈夫。樹が良い子だから、恭子ちゃんに 選ばれたんだよ。」

と優しく言って。
 


「ありがとう、お祖母様。」と言った後で
 
「智くんが お母さんのこと、褒めていたのに。教えないよ。」

と母に言う。
 

「えっ。智之さんが。何て?」

今まで 寂しそうだった顔が すぐに明るくなる。
 

「お母さんが 良いから、恭子が 安心して 来られるって。お母さんは、麻有ちゃんにも 優しくしてくれるから 感謝しているらしいよ。」

樹が言うと、お祖母様は笑顔で、
 
「そうよ。沙織ちゃん。」と言う。

母は、嬉しそうに 照れた笑顔になる。
 

「お祖母様。その“ 沙織ちゃん” て言うの 止めてよ。すごく可愛い人 みたいだから。」

と樹が言うと、母は ムッとした顔をする。


樹は お祖母様と顔を見合わせて笑い、自分の部屋に 引き上げた。
 



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