シンフォニー ~樹
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健吾達は 正式に夫婦となり みんながホッとした夏の初め 樹のお祖父様が倒れた。
夏休みに入った恭子が 樹の家に 泊まっていた時だった。
平日の午前中 みんなが 仕事に出た後のことで 家には お祖父様達と 母と恭子の4人しかいなかった。
母と恭子で 家事をしていた時間。
リビングから お祖母様が 大きな声で “誰か” と呼んだ。
先に駆け付けた恭子は 胸を押さえて 苦しむお祖父様を見た。
「お祖父ちゃん、お祖父ちゃん。」
と うずくまるお祖父様の 背中をさする恭子。
母が 駆けつけると 恭子は 水を取りに走る。
「お祖父ちゃん、お水。少し飲める?」
恭子が差し出す水を 一口含んで 苦しみながら “ありがとう” と言ったお祖父様。
「恭子ちゃん、救急車を呼ぶから。お祖父様をお願い。」
と、母が電話をかける間 恭子は ずっとお祖父様の 背中を撫で続けた。
苦しそうなお祖父様の声は 徐々に小さくなり 救急車が到着した時には 意識を失っていた。
バタバタと 救急車に乗せられるお祖父様。
一緒に乗って行く母は、
「恭子ちゃん、麻有ちゃんに 連絡して。後をお願い。」と言った。