シンフォニー ~樹
ずっと 樹に寄り添っていた恭子は そっと樹をすり抜けて キッチンに入っていく。
こんな時、お祖父様は、
『恭子ちゃん、お茶を貰えるかな。』
とよく言っていたから。
みんなのお茶を淹れる恭子は、お祖父様が いつも使っていた湯呑にも お茶を満たす。
リビングのテーブルに お盆を置いた恭子に、
「ありがとう。」と母が言い みんなにお茶を配る。
恭子が静かに お祖父様のお茶を 祭壇に置くと、
「恭子ちゃん。」
と言って、絵里加がすすり泣く。
絵里加の涙は 伝染して みんなの 新しい涙を誘う。
泣きながら 樹の隣に座る恭子。
樹は 優しく頷いて 肩を抱き寄せた。