シンフォニー ~樹

「とても寂しいね。お祖父ちゃん、素敵な人だったものね。」

黙って お茶をすするみんなに お祖母様が 静かに言う。

誰も応えないのは 涙が溢れてしまうから。

みんなが 静かに頷く中 お祖母様は 話し続ける。
 

「でも、悲しいことじゃないんだよ。これは順番だから。お祖父ちゃんは みんなが悲しむことを望んでないよ。」


お祖母様の声は 小さいけれど とても落ち着いていた。
 

「お祖父ちゃんは、とても幸せだったと思うよ。紀之と智之は 立派に会社を 守ってくれて。樹と壮馬も その後を継ぐ準備をしていて。翔は みんなの夢を背負って 努力している。宝物だった絵里ちゃんの 結婚式も見届けて。」

お祖母様は、一人一人の顔を見ながら ゆっくりと話し続ける。
 

「しかも最後は 樹と一緒に この家を守ってくれる恭子ちゃんに 見送ってもらえたんだからね。」


お祖母様の言葉に 絵里加と恭子は泣きじゃくり 他のみんなも すすり泣く。
< 119 / 166 >

この作品をシェア

pagetop