シンフォニー ~樹
「親父らしいな。」
父が智くんに言う。
「うん。よく、ありがとう って言っていたよね。」
智くんは、そっと目頭を押さえた。
「年齢的にも いつか 親父が いなくなることは 思っていたけれど。こんなに 急だと思わなかったから。」
父の言葉は、みんなの思いだった。
頷く 智くんと樹に、
「やっぱりお祖父様 すごい人だよね。弱い姿 見せたくなかったんだよ。家族に 迷惑かけたくなかったんだよ。」
と翔が言う。
「少しは、看病させてほしかったよ。これじゃ 何の準備もできないよ。」
と父の声は潤んでいた。