シンフォニー ~樹

「実は俺も、それで悩んだよ。智くんは、15年くらい総合商社に勤務して、それから廣澤工業に移ったんだよ。」樹が言う。
 
「絵里加のパパが?知らなかったな。」

健吾は驚いた顔で言う。
 

「それでも結局、入社すれば 反発はあるわけだから。親父と智くんに、すぐに廣澤工業に 入社することを勧められて。それで決心したんだ。」

健吾は真剣に聞いている。
 
「うちの父も、卒業したらすぐに、自分の会社に入れるつもりなんです。ただ、それでいいのか不安もあって。」


「自分次第だよ。上に立つ自覚を強く持てば、だんだん回りも認めてくれるって。智くんに言われたよ、俺も。」

何故 自分がこんなに正直に、健吾にアドバイスをしているのか 樹は苦笑してしまう。

恋敵なのに。

樹と同じような立場で、同じ女性に恋をしている健吾が どうしても自分と重なってしまう。
 


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