シンフォニー ~樹
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恭子は まるで家出娘のように スーツケールに着替えを詰めて 樹の家に来た。
ご両親と一緒に 一旦、家に帰る恭子。
名残惜しそうに樹を見上げて、
「用意ができたら 連絡するから。樹さん、迎えに来てくれる?」と言う。
「何も、今日からじゃなくても いいでしょう。」
とお母さんがたしなめると 恨めしそうに 樹を見つめる。
「うちは大丈夫です。お母さんさえ良ければ。僕、迎えに行きますので。」
と樹は言ってしまう。可愛くて、愛しくて。
今夜から一緒にいられることが嬉しくて。
「もう。樹さんは甘いんだから。駄目な事は駄目って、ちゃんとしつけてね。」
とお母さんは言う。
弾ける笑顔の恭子は、
「善は急げ、だから。」と言い
「この通りわがままで。樹君、振り回されないでよ。」とお父さんも言う。
恭子を送りだすご両親は きっと寂しいはずなのに。
樹と家族を信用して 快く見送ってくれる。