シンフォニー ~樹
41

恭子は まるで家出娘のように スーツケールに着替えを詰めて 樹の家に来た。



ご両親と一緒に 一旦、家に帰る恭子。

名残惜しそうに樹を見上げて、
 
「用意ができたら 連絡するから。樹さん、迎えに来てくれる?」と言う。
 
「何も、今日からじゃなくても いいでしょう。」

とお母さんがたしなめると 恨めしそうに 樹を見つめる。
 


「うちは大丈夫です。お母さんさえ良ければ。僕、迎えに行きますので。」

と樹は言ってしまう。可愛くて、愛しくて。

今夜から一緒にいられることが嬉しくて。
 

「もう。樹さんは甘いんだから。駄目な事は駄目って、ちゃんとしつけてね。」

とお母さんは言う。

弾ける笑顔の恭子は、
 
「善は急げ、だから。」と言い
 
「この通りわがままで。樹君、振り回されないでよ。」とお父さんも言う。


恭子を送りだすご両親は きっと寂しいはずなのに。

樹と家族を信用して 快く見送ってくれる。
 



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