シンフォニー ~樹
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家に着くと恭子は、
「ただいま。」と言う。出迎えた母に、
「今日から、お世話になります。よろしくお願いします。」とお辞儀をして。
母は 思わず笑ってしまう。今までも、さんざん来ていたから。
「もう、恭子ちゃん、本当に可愛いんだから。」と言う。
リビングに入って 父とお祖母様に もう一度 同じ挨拶をする恭子。
みんなが笑顔で、恭子を温かく迎える。
「そうだ、恭子ちゃん。一つだけ約束。学校の朝は 自分の準備を優先すること。朝ごはんの用意は しなくていいからね。」
母が、恭子を見て言うと、
「えー。それじゃ 奥様失格です。」
と寂しそうに言う。
「いいの。それで娘合格よ。」
と言う母に、恭子は 笑顔で頷く。
「樹も、恭子ちゃんが 学校の前の日は 早く寝かせてよ。」
と母に言われ、樹は 顔を赤くしてしまう。
「何 照れているんだよ。」
父は目敏くて、樹はさらに赤くなる。
幸せな時間。
お祖父様が亡くなってから 少しずつだけれど みんなが前を向いて進みだす。