シンフォニー ~樹
樹にとって、絵里加は特別な女の子だった。
綺麗な卵形の輪郭に、大きな二重の目。
真っ直ぐ通った鼻筋は上品に細く、ふっくらとした唇は 花びらのように可愛い。
白い頬を染めて 話す絵里加は、完璧に美しい。
それに 絵里加の魅力は 外観の美しさだけではない。
いつでも笑顔で機嫌がよい。
誰かを責めたり、怒ったりすることがない。
誰にでも優しく気を配る、天使のような女の子だから。
絵里加の回りは、いつもキラキラと輝いていたから。
『姫に恋人か。』
樹は ベッドに身を投げ出して ため息をつく。
大好きな従兄妹。
可愛くて、優しくて、いつも近くで守りたいと思っていた。
心に穴が空いて風が通り過ぎる。