シンフォニー ~樹
だから翌日、ふいに 絵里加が来た時は、みんなの笑顔が輝く。
リビングの照明までが、明るくなったような気がした。
たとえ健吾と一緒でも 絵里加の近くにいたい。
絵里加を見ていたい。樹は強く思う。
叶わない思いだとしても 離れるなんてできないと思う。
絵里加の不在を 寂しがる家族を予想して、一日だけでも 絵里加を連れて来た健吾。
樹は やっぱり感心してしまう。
「ケンケン、ありがとう。お祖母様、すごく寂しそうだったから。来てくれて、本当に感謝するよ。」
樹は健吾に言う。
「俺の方こそ、感謝しています。絵里加を独り占めして。それなのに、こんなに温かく迎えてもらえて。」
健吾の 控えめな言葉は、樹の心に沁み渡る。
『姫は 幸せだよ。ケンケンなら大丈夫』
何度も 言い聞かせた言葉を、また心で呟く。