シンフォニー ~樹
恭子の目からも、樹は 好意を感じ始めていた。
みんなで 食事をしている時に、ふと視線を感じる。
無邪気に “お兄さん” と近付きながら、臆病な冗談で 笑いに変える。
七才年下の女子高生。
“参ったなあ” と 樹は思っていた。
健吾と絵里加は 家が完成して 一緒に住み始める。
二人は 大学三年生になって 授業数が減り 時間を持て余していた。
二人で 家を整えたり、遠出をしたり。
贅沢な時間を過ごしているようだった。
智くんは 絵里加に コンパクトな乗用車を買って、運転の練習をさせ始めた。
若い絵里加は、すぐに 運転に慣れて 松濤に乗ってくる。
健吾の車は、四輪駆動のSUVで、絵里加が乗るには 大きい。
みんなが 少しずつ 絵里加の不在に 慣れていく。
健吾と絵里加は 直々、松濤に来ていたから。
そして週末は、両家揃って 食事をしていたから。