シンフォニー ~樹
7時に 家まで送った樹に、
「もう少し、遅くてもいいわよ。」
とお母さんは笑う。
「いえ。夜は 狼が目を覚ますので。」
と樹が言うと、お母さんはケラケラ笑う。
樹が 大人だから お母さんも 安心してくれる。
ご両親の信頼は 裏切れない。
大切な娘を 快く預けてくれたのだから。
会社での樹も 少し変化していた。
仕事に 取り組む姿勢が 積極的になり 先輩や同僚を あっと言わせるような 成果を上げる樹。
「守るものができると、こうも違うのか。」
と智くんは 驚いて言う。父は、満足そうに頷いて、
「ウカウカしていると、ケンケンに 追い越されるからね。」と笑う。