シンフォニー ~樹
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営業部に異動した樹は 日中は 外回りの合間に 恭子とLINEをする。
恭子は “チュッ” というスタンプを 会話に織り交ぜて 樹を笑顔にしてくれる。
健吾と絵里加は 本格的に結婚式の準備を始めた。
二人の両親の関係で かなり盛大な 結婚式になりそうだった。
絵里加は ウエディングドレスをオーダーすることになり 恭子は 目を輝かせていた。
「恭子は、どんなドレスがいいの?」樹が聞くと、
「うーん、まだ想像できないな。可愛く見えるのがいいけど。」
上目使いに 樹を見ながら言う恭子。
樹は、歩きながら 軽くキスをしてしまう。
「大丈夫。恭子は可愛いから。」と。
最近平日も 樹が早く帰れるときは 待ち合せて 一緒に夕食を食べる。
恭子を 送って歩きながら 二人は立ち止まり キスを繰り返す。
キスをしてからの恭子は 甘い艶めきを身に着け 樹を惑わせる。
「恭子、可愛い。このまま さらって行きたいよ。」
ギューッと 抱きしめて言う樹に 切ない目で 頷いてくれる。
健吾は 真面目に 働いているらしい。
社長の息子であることは 一部の上司にしか明かさずに 普通のバイトと一緒に 汗だくで仕事をしているらしい。
「いつか 俺が社長になったら あの主任クビにしてやる。」
健吾の身分を知らずに きつい仕事ばかり 押付ける主任を そんな風に言って 樹達を笑わせる。
「そういう社員に 支えられて 会社が 利益を上げていることがわかるだろう。」
お父さんの言葉は 健吾だけでなく 樹の心にも 強く響いた。
毎日 お弁当を作って 健吾を送り出す絵里加は 昼間の時間を 持て余していた。
健吾の実家や 松濤の家に顔を出しても まだ時間は 余ってしまうらしい。
「ねえ、絵里加も パパの会社で できる仕事 ないかしら。」
と智くんに相談してきた。
「事務所で 仕事してもらおうよ。入力とか電話番とか いくらでも仕事はあるから。」
と父が言い 五月の連休明けから 樹と一緒に 仕事をすることになった。
みんなそれぞれに 新しい生活に 慣れ始めたとき 樹は 恭子のお父さんに お願いごとをする。
「連休、恭子と 旅行に行ってもいいでしょうか。」
樹は、不安もあった。
もう一歩 踏み出してしまったら もっと辛くなる。
それがわかっていたから。
「樹君、約束を守ってくれたからね。いいよ。ゆっくりしておいで。」
お父さんの温かい言葉に 樹と恭子は 微笑み合う。