シンフォニー ~樹
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連休明けから 樹と一緒に働き始めた絵里加に 樹は 今までとは違う余裕を持って 接することができた。
「おはようございます。」
と樹よりも 早く出社している絵里加に 迎えられて、
「姫、おはよう。毎日ありがとう。」
朝 必ず 事務所の机の上を 拭き掃除してくれる絵里加に 樹は 素直にお礼を言える。
「ううん。仕事 慣れなくて みんなに迷惑かけるから。」
絵里加は 謙虚で控えめな 返事をする。
「そんなことないよ。姫 覚えが良いって みんな驚いていたよ。」
簡単な入力や 事務仕事でも 絵里加は 丁寧に 正確な仕事をしているようだった。
「少しでも、役に立てればうれしいな。」
と華のような笑顔で言う。
「姫が 笑っているだけで 事務所が明るくなるから。十分、役に立っているよ。」
とても落ち着いた気持ちで 絵里加と話せる樹。
「絵里加 お給料もらうんだから。それだけじゃダメだよ。」
と 絵里加は 不満気に答える。
真面目な絵里加に 苦笑して樹は、
「ケンケンも 頑張っているみたいだね。」
と話題を変えてみる。
「そうなの。体を使う仕事だけど すごく一生懸命やっているわ。」
絵里加は得意気に言う。
樹は、笑顔で頷いて
「また 一緒に遊びに行こう って言っておいて。」と言う。
あんなに好きだった絵里加と これほど 落ち着いて話せるなんて。
樹は 自分に驚くとともに 恭子の存在に感謝する。