正しくない恋愛の始め方
午後11時半。明日のことを考えると、そろそろ寝なければならない。とうとうこの時間が来てしまったか、と腹を括る。
「紗衣、こっちにおいで。」
「う、……はい。」
「ふふっ、俺の奥さんは可愛いね。」
桂史朗さんは、黒いTシャツに白いハーフパンツを穿いていた。Tシャツにはぶさいくな猫の絵が白文字で書かれている。やっぱりこの悪魔は、可愛いらしい。私のことを可愛いなどとぬかしているが、鏡を見るべきだ。
セミダブルに腰掛けている桂史朗さんの隣に座る。ちょこん、という表現がぴったりなほど縮こまって座ったら笑われた。
「何もしないよ、そんなに信用ない?」
「職務上は信用していますが、プライベートは要観察です。」
「うーん、それは喜んじゃダメだよね。」
次の瞬間、肩を抱き寄せられてそのままベッドへ引きずり込まれた。流石に異性とこんなに近くになったことはないので、緊張する。が、その緊張がバレたのか、鼻をつままれた。
桂史朗さんはけらけら笑いながら、寝ようと電気を消した。もちろんしばらく寝れなかったが、疲れていたのかそのまま寝てしまった。
「おやすみ、紗衣」
だから、私は知らない。額にキスされたことも、ベッドから桂史朗さんが抜け出したことも、その時に桂史朗さんが浮かべていた表情も。
「……衣、紗衣、そろそろ起きないと。」
「んぅ、うー……。」
「ねぇ、それわざと?わざとやってるの?」
「……しばた、しゅにん。」
「わざとだよね?」
目が覚めたら、不機嫌そうな桂史朗さんがいた。紗衣のくせに生意気だ、とぶつぶつ言いながら部屋を出る彼を見送って時計を見ると6時半だった。6時半に起きたいといった私の要望通り、先に目覚めた桂史朗さんが起こしてくれたらしい。有り難い限りだ。
ベッドから出ると軽く整えて、与えられた部屋で着替えるとリビングに向かった。
「おはようございます、起こして下さりありがとうございました。」
「……いーえ、起きれて良かったね。おはよう。」
「えっと、……朝ごはん用意しますね。」
不機嫌な理由を尋ねようかと思ったけど、時間的に微妙だから放っておくことにする。本当に嫌だったら言ってくれるだろう、たぶん。昨日セットしておいた炊飯器から、ごはんをよそい、出来あがったみそ汁と卵焼き、焼き鮭を並べる。
「おおー、朝から豪華だ。」
「大したことないですよ。ちなみにお昼はどうされますか?」
「どういうこと?」
「私はいつもお弁当です。いりますか?」
目を丸くした後、食べたいと笑った顔に嬉しくなったのは気のせいだと思う。
「紗衣、こっちにおいで。」
「う、……はい。」
「ふふっ、俺の奥さんは可愛いね。」
桂史朗さんは、黒いTシャツに白いハーフパンツを穿いていた。Tシャツにはぶさいくな猫の絵が白文字で書かれている。やっぱりこの悪魔は、可愛いらしい。私のことを可愛いなどとぬかしているが、鏡を見るべきだ。
セミダブルに腰掛けている桂史朗さんの隣に座る。ちょこん、という表現がぴったりなほど縮こまって座ったら笑われた。
「何もしないよ、そんなに信用ない?」
「職務上は信用していますが、プライベートは要観察です。」
「うーん、それは喜んじゃダメだよね。」
次の瞬間、肩を抱き寄せられてそのままベッドへ引きずり込まれた。流石に異性とこんなに近くになったことはないので、緊張する。が、その緊張がバレたのか、鼻をつままれた。
桂史朗さんはけらけら笑いながら、寝ようと電気を消した。もちろんしばらく寝れなかったが、疲れていたのかそのまま寝てしまった。
「おやすみ、紗衣」
だから、私は知らない。額にキスされたことも、ベッドから桂史朗さんが抜け出したことも、その時に桂史朗さんが浮かべていた表情も。
「……衣、紗衣、そろそろ起きないと。」
「んぅ、うー……。」
「ねぇ、それわざと?わざとやってるの?」
「……しばた、しゅにん。」
「わざとだよね?」
目が覚めたら、不機嫌そうな桂史朗さんがいた。紗衣のくせに生意気だ、とぶつぶつ言いながら部屋を出る彼を見送って時計を見ると6時半だった。6時半に起きたいといった私の要望通り、先に目覚めた桂史朗さんが起こしてくれたらしい。有り難い限りだ。
ベッドから出ると軽く整えて、与えられた部屋で着替えるとリビングに向かった。
「おはようございます、起こして下さりありがとうございました。」
「……いーえ、起きれて良かったね。おはよう。」
「えっと、……朝ごはん用意しますね。」
不機嫌な理由を尋ねようかと思ったけど、時間的に微妙だから放っておくことにする。本当に嫌だったら言ってくれるだろう、たぶん。昨日セットしておいた炊飯器から、ごはんをよそい、出来あがったみそ汁と卵焼き、焼き鮭を並べる。
「おおー、朝から豪華だ。」
「大したことないですよ。ちなみにお昼はどうされますか?」
「どういうこと?」
「私はいつもお弁当です。いりますか?」
目を丸くした後、食べたいと笑った顔に嬉しくなったのは気のせいだと思う。