松菱くんのご執心

幼なじみの壁








 俺はあいつには敵わない。



正攻法もなにも、立っている土俵が違ったんだ。

俺は押しても引いても幼なじみの枠からは出られない。



 あいつはその枠にすら入っていない、ひとつだけ俺と共通点があるとすれば、はみ出しものだった点だ。


俺は地味で目立たなかった、そしてあいつは学校一の不良、それくらいだ。




 松菱とみかさが付き合ったのを聞いたのは文化祭でみかさのクラスを訪れた時だ。




 三木さんと戸黒さん、とかいう人達が俺の席に乱入し、

みかさがコーヒーを持ってくるまでの間で松菱は、

「みかさと付き合った」と真剣な顔で言った。




「やっぱりな」と諦めにも似た気持ちと、



「なんで俺じゃだめなんだ」という妬みが混然一体となって津波のように押し寄せた。



< 101 / 148 >

この作品をシェア

pagetop