松菱くんのご執心
 呆れと、情けなさで、ため息がでる。


 じゃあ、と三木さんが顔を寄せてきた。



「な、なんですか」俺は少し仰け反る。


「みかさちゃんが駄目なら、俺にしとけよ」


と、揶揄するような笑みを浮かべて言った。
 

「それ、気の利いた言葉なんですか」


「この前、少女漫画で仕入れた言葉だ。どうだ、気に入ったか」


「その言葉の使い所は、人とシュチュエーションを選んだ方が良いですよ。
少なくとも失恋した俺に、というか、男にかける言葉ではないと思います」



「ただの冗談。ジョークだ、ジョーク」


三木さんは無責任に手を振る。



 傷ついた俺の心に、塩だけでは物足らず唐辛子を塗りつけてくる。


しかし、不思議なことに三木さんとくだらない掛け合いをしていると、

もう、なんか、どうでもよくなってくる。

決して投げやりになったとかではなく、目の前にいる変な人に、気を取られているのだ。



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