松菱くんのご執心
「みかさに、喧嘩はしねえって約束したから。
………もう、自分が誰かを傷つけるなんて、したくねえ。
俺には守りたいものがあるんだよ……」



 ゲホッと松菱くんがむせ返る。



「なんでよ、そんな約束。守らなくていいよ……」



わたしは唇を噛み締め、強く地面を蹴る。


足枷を引きちぎる思いで足を前に、前に出す。



 男たちの前に立ち塞がり、手を広げる。


「やめてっ!」


叫んだ喉は、からからに乾いていた。



 男たちのは一瞬止まり、にやっと不敵な笑みを浮かべた。
松菱くんは驚きで固まっている。


「呼んでもないのに来るなんて、馬鹿な女だ」男たちは言う。



「心配だから来るに決まってるでしょ!」


さっきまで悲観的に佇むだけだったとは思えないほど力強く、わたしは声を張った。



「なんで来たんだよっ。早く逃げろ……」


松菱くんは切迫した息づかいで、よろよろと立ち上がり、わたしを後ろへ下がらせようとした。


わたしは、その手を振りほどき、退かない。



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