松菱くんのご執心
この感情の矛先はみかさにしか向いていないのだから、みかさにぶつけるしかない。
でも、嫌がることはしたくない。
矛盾だらけの心情だ。
みかさは席を立って、机から教科書を取り出す。
「つ、次、教室移動だから松菱くんも早く行こ?」
「そうだな」
「あ……ちょっと待って」
みかさが止める。
「どうした?」
「松菱くん、教科書は?」
そんなの……。
「いらねえよ」
「なんで? 授業分からなくなるよ?」
こてん、と首を傾げる。
そんな何気ない姿も俺にとってはご褒美みたいなもんだ。