松菱くんのご執心
「君に用なんかない。それよりもまだ、みかさに付きまとってるの?
しつこいねえ松菱くんは」
黙って爽を見つめる松菱くん。
こんな状況じゃなければ、わたしは反論しないの? と聞いている。
「あ、もしかして」
爽はイタズラを思いついた子供同様の無邪気な笑みを浮かべて、松菱くんの机に両手をついた。
「松菱は、みかさのことが好きなのかな?」
松菱くんは「好き」の二文字に、ビクッと反応を見せた。少し目を見張り、舌打ちをした。
爽の挑発に乗らなくていいと、松菱くんに視線を送ったが全然こっちを見ていない。
真っ直ぐと爽を見据える松菱くんは、挑発に乗った、というより、渡されたバトンを受け取ったみたいに頷いた。
「だったら、いけないのかよ」
「え?」
次に目を見張るのは、わたしと爽、それと周りのクラスメイトだった。
「今なんて……?」
周りが一気に静まり返る。だれもが松菱くんの言葉に耳を傾けた。
「俺、好きだよ。みかさのこと」
恥ずかしげもなくはっきりと言った。それも、私に向かってじゃなく、爽に向かって。
せめて告白ならこちらを見て欲しいなあ、松菱くん、と心の中で訴えた。