松菱くんのご執心
「お前が白羽根に気にかけてもらえるのはな、お前が地味で頼りなくて、可哀想だからだ」


 「えっ」と声が出そうになった。


どうやら、わたしの話をしているらしい。話しているのは須藤だ。


「良かったな早瀬。構ってもらえて」


 須藤が話しかけている相手は爽だった。


構ってもらえてって、何? 


失礼でしょ、爽にもわたしにも。無意識に手の力がはいり、爪が手の平にぎしぎしと音を立ててくい込む。


爽が一方的に須藤から責められているに違いない。


助けなきゃ、と思った。


 このまま教室に乗り込もうかとも考えたが、爽の勇んだ声をきいてもう少し様子を見ることにした。


「だったらどうしたって言うんだ」爽が言う。


「は?」


「俺がもし、こんな風に地味じゃなかったら、みかさは俺を気にかけないっていうのか」


「そうだろうな、あいつはお前がそんなだから気にかけるんだ」


「分かった」


「何がだよ」


「俺が証明する」


「無理だって」


そう言って須藤は馬鹿にしたように笑いその場を離れる。



扉に近づいてくる足音に、わたしは咄嗟に近くの女子トイレに身を隠した。


 どうしてそういう話になったかは不明で、首をかしげながらその日は家に帰った。



驚いたのはその翌日だ。



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