松菱くんのご執心
異変に気づいたのは、それから一ヶ月ほどした時だった。


体育祭の準備期間、私たちのクラスはグラウンドの石拾いをすることとなった。



 爽はクラスの女子、数人と談笑しながら石を拾っていた。


わたしもわたしで、友達数人と固まって石を拾っていたのだけれど、ふと爽の腕に傷があることに気づいた。


左手首だ。


真一文字に引かれた線のような傷。



わたしは思わず立ち上がった。


「え、どうしたのみかさ」

「足疲れちゃった?」


と友人がわたしに、心配の声をかける。



「ううん、大丈夫。ちょっと抜けるね、すぐ戻ってくるから」




たかが傷、されど傷なのだ。


嫌な予感が身体中を駆け巡る。


茫然自失とまではいかないが、ぼんやりとしながら爽の所へ足を運んだ。



「あ、みかさあ」

爽が嬉しそうに笑顔を向ける。



「ちょっと、借りてもいかな」

わたしは爽の腕を掴み、女の子達に声をかけた。

女の子達は戸惑ったようだったが、わたしが恐らく、怖い顔をしていたのだろう。


「ど、どうぞ」と遠慮した声を出した。

「ありがとう」



爽を引きずって校舎前まで連れてきた。



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