松菱くんのご執心
「うん、まあ。そのつもりで来たからね」
「へえ。………俺はもとより、そのつもりじゃなかったんだけど」
「じゃあ、どういうつもりだったの」
勉強会に来て勉強するつもりじゃない松菱くんは、
「みかさに、甘やかしてもらおうと思って」
と軽やかな語調で、こてんと首を傾げた。不覚にも、心臓が脈打つ。
「不純だなあ」
「俺は下心ありありだぞ」
「不純だ」
「それでもいいよ」
松菱くんはふっと軽く笑う。スローモーションのようにゆっくりと景色がながれた。
「ま、松菱くん?」
視界いっぱいに松菱くんの胸板が広がる。気づいた時には覆い被さるようにわたしは抱きしめられた。
そのまま床に倒れ込む。
頭を打ちそうになったが、松菱くんの大きな手がわたしの頭を庇った。