松菱くんのご執心

大事なもので今現在、奪い取ろうとしているものなあに。


これは何かのなぞなぞか? 考えても分からない。さっぱり分からなかった。


「ま、なんでもいいか。せっかく松菱くんの家に来たんだから、勉強教えてよ」


鞄からノートと問題集、そして参考書を取り出した。


「その望み叶えてやるから、俺の望みも聞いてくれ」


「悪魔の囁きみたいだ」


「髪色的には天使だろ」


天使は金髪なのか。チャラいな、という疑問は一旦、胸に仕舞っておく。


「松菱くんの望みって何?」


「それは、みかさが問題を解いてる時に勝手に叶えてもらうから、気にせずに解け」


「気にせずにって……そう言われると余計に気になるのが人間なのよ」


「まあまあ、いいから」



そう促され、十分ほど問題を解いていた。
松菱くんの望みって何だったんだろう、と思っていると、背中に温もりを感じた。


お腹には手を回され、肩に顔をうずめている。



────こ、これかあ、望みって。



「すっごく気が散るんですけど」


「俺、勝手に甘えることにしたから、分かんないとこあったら聞いて」


「わ、分かったけど、付き合ってないのにこういうの良くないよ」


「だから、付き合ってよ。俺はこんなに好きなんだからいいだろ」


「い、いやあ。それは、まだなんとも……」


「だろ? だから勝手に甘えるから、気にするなって言ったんだ。これは俺なりの気遣いだ」


そう言われると、ぐうの音も出ない。


大人しく問題を解き続け、分からないところは背後の松菱くんに教えてもらった。
二人羽織の状態でも相変わらず、分かりやすい説明だった。


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