松菱くんのご執心
「自分を傷つけるなって、みかさは言っただろう」


「うん。言ったね」


「あの言葉と似たようなことを言われたことがあるんだよ。
みかさも会ったことある人に言われた。
誰か分かるか?」



うーん、わたしが会ったことある人ってなると……戸黒さんか三木さんになる。

その二択だったら、絶対に



「戸黒さんかな」


「ハズレ、大ハズレ」とけたけた笑う。


「俺がみかさでもそう答える」


「ということは、三木さんが言ったの?」


「そう。しかも、俺がまだ児童相談所で暮らしていた時だ。

そこに新入社員として三木さんが来て、自己紹介もままならないうちに俺の手の甲を指さしてさ、言ったんだ。

『自分を傷つけてどうすんだよ、その手痛いだろ。
誰かを守る手なのに、傷つけるために殴るから痛いんだ。

もっと自分を大切にしろ、そんで、もし大切な奴が出来たら守ってやれ。
それがお前の仕事だ。

……それに、そんな事をしても犯人は見つからないぜ?』って仏頂面で言ってきたんだ」


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